JOKER #13 −きちんとドアから入りましょう− 人気の無い裏庭。 さわさわと風が木の枝をなびかせる。 そこに2人の男子生徒と女子生徒。 人気の無い場所に二人切りであれば何をしてるかは自然と限られてくる。 その上、二人が男女であれば尚のこと。 そんな予想を立てることもなく、ここは絶好の告白プレイスとして校内では有名だ。 「あ、あのさっ……」 最初に声を出したのは男子生徒の方だった。 その緊張の様子からこの後に続くことばなど、考えるまでもない。 「ずっと……可愛いと思ってたんだ……良かったら俺と、付き合ってくれないかな?」 男子生徒は容姿は中の上といったところか。 この学園にNo.5とかという人気者がいなけりゃ、そこそこモテるタイプではあるだろう。 少女漫画であれば、この後に。「私も……ずっと好きだったのっ!!」的な展開が待っているのだろう。しかし、生憎告白された女生徒であるはそんなタイプではなかった。 「悪いけど、名前も知らねぇ、野郎と付き合う程安くはねぇーから。他当ってくんない」 断り方ももっと他にあっただろうに……。 こんな断り方では、相手に喧嘩を売ってる様なものだ。 例によって、例の如く、目の前の男子生徒も流石にカチンッと来たらしい。 いくら、好意を抱いていた少女の言葉だといっても、こんな風に言われれば百年の恋も冷めるどころか、腹が立つ。 「お前何様のつもりだよ! ちょっと女達に人気があると思って、いい気になってんじゃねーよっ!」 「お前何様ってのはお互い様でしょーに。大体……会って話したこともない初対面の男に行き成り好きだなんていわれて、はい、私も。なんて女の方が少ねぇっての。つか、名前も知らねー男に告白されたって、嬉しくもなんともねぇーての。それとも、アンタ初対面の、相手の性格すら知らねー女を一発で落とせる自信でもあったわけ? だとしたら大した自信だね。初対面で告白して成功するくれーなら学園のランキング5ン中に入ってるんじゃねーの? でも、私、あの5人の中にアンタなんいなかったと思うけど。それでも、自信があったってんならお笑いだね」 に一気に捲くし立てられ、男子生徒は固まる。 が言ってることにきっと女生徒の大半は頷くだろう。 しかも、反論の余地がない。 「くそっ! てめーなんか、女にしかモテねー男女のくせにっ!」 結局男子生徒は僻みなのか、なんなのか分からない捨てゼリフを残して去ってしまった。 完璧に去った後に、は深い溜息を付く。 同じく告白されるならまだ女の子の方がいい。 駄目もとで来てるために、断れば直ぐに引いてくれるのだ。大半は憧れの様なものだから。 「相変わらず、モテモテだな、お前」 後ろからに声を掛けられる。 「覗きなんて趣味悪いですよ、センセ」 「あぁ? 保健室の裏でやってんのが悪ぃんだろーが。毎回毎回そこで告白大会しやがって、イヤでも聞こえてくるオレ様の身にもなれっての」 「ハイハイ。スイマセンねー。あ、入るからソコ避けて」 と言って、は保健室の窓の足をかけ、トンッっと窓から侵入した。 「お前……入ってくんならドアから入れ、ドアから」 「いつものことだからいいじゃん」 「お前な……」 龍太郎はに咎めるようにいうものの、その口調は優しいし、それ以上は言わない。まあ、半ば毎回のことで呆れて、何回言っても無駄だということを悟ってのことには違いないだろうが。 「センセ、次私、ベッドで休養するから。テキトーに誤魔化しといて」 「…………分かった」 は一番奥のベッドのカーテンを空け、布団に潜り込もうとしていたが、龍太郎の一言に一瞬動作を止めた。 「。拒絶すんのは勝手だが、攻撃ばかりしてると痛い目みるぞ」 「痛い目見たくないから、保健室の裏にしてんだよ。センセには聞こえてるんっしょ」 は振り向かず答え、そのままさっさと布団に潜る。 後でヒトミを呼んでと言って。 次へ 戻る 卯月 静(06/11/03) |