Extra Ver.Tora −ゲームを長時間するのは止めましょう−



 ゲームセンターには多種多様なゲーム機が置いてある。
 その中にはランキングが付いており、高スコアをだすと名前を登録するものもある。
 しかし、名前は本名ではなく、ニックネームやイニシャルで登録するために、どれが誰のスコアなのかは本人しかわからない。
 しかし、常連にもなれば運よく名前を登録しているところに出会い、誰なのか正体が分かったりもする。
 それがゲーセンで働いている者なら尚のこと。どれが誰なのかはよく知っている。

 それは、ゲーセンでバイトをしているトラも同様で、多くの常連を知っている。
 しかし、最近よくランクインしている「Joker」というプレイヤーの正体が分からない。
 頻繁にランクが変わっているから、みたところ、ここの常連には違いないだろうが、中々登録している場面には遭わない。
 ほぼ毎日ここで働いているから会って不思議はないはずなのだが。

「トラ、お前本当に『Joker』が誰だか知らねーの?」
「知らねーって」
「俺等結構ここに通ってんのに未だに会わねーよなぁ」

 といった感じにバイトをしてるから知ってるだろうと、ここの所毎日聞かれる。

「こんにちは〜」
「なんだ、アンタか……」

 トラが見ると、そこには一人の女の子。体格は決してスリムとは言えない。
 最近ダイエットをし始めたと聞く。
 そして、最近になってよくゲーセンにくるようになった。といっても、簡単なゲームしかしないが。

 今日は珍しく一人じゃないらしい。
 。最近彼女もここによく通うようになった。
 はヒトミとは違うゲームをしている。
 よく、格闘ゲームの辺りや、クレーンゲームのあたりでいる。

「はい、ヒトミ」
「くれるの? ありがとう!」

 は獲ったヒヨコのぬいぐるみをヒトミに渡す。
 その後、は別のゲームのところに行く。

 少し経ったあと、クレーンゲームの景品を整理していたトラは後ろをみると、丁度、の画面は名前を登録するところだった。
 どうやら、ランキングに入ったらしい。
 彼女は結構ゲームが上手かったらしい。そういや、彼女を見たときは男の子だと思ったな、とか考えていた。
 すると、の登録した名前に驚いた。

 そこには『Joker』と記されていた。

「『Joker』ってアンタだったんだ」
「知らなかったんだ? トラは知ってるかと思ったけど」
「今知った」
ちゃんすごい!! ランクインしてる」

 不意に後ろからヒトミに声を掛けられた。

「この手のゲームは結構得意だから」

 とは笑顔で答える。
 ヒトミはまたゲームに挑戦してくるとその場を再び離れた。
 ヒトミ相手には向ける笑顔が違うんだなとトラは感じた。

「私達はそろそろ帰るから」

 そう言っては立ち上がる。

「ああ、また来いよ」

 トラの声には手を振り、ヒトミを連れてゲーセンを出た。
 『Joker』のことは他のヤツには言わずに自分だけが知ってるのもいいかも知れないとトラは思いつつ、また仕事に戻った。


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卯月 静 (06/11/03)