JOKER Extra Ver.Yurika −授業をサボるのは止めましょう−



 本日は晴天の昼寝日和。
 昨日夜遅くまで起きていたせいで、は寝不足だった。
 授業に出ても寝てしまうだろうと保健室で寝かせてもらおうと思っていた。

 しかし、保健室に行ってみると、空きのベッドは一つしかなく、病人が来た時の為に残しておきたいからと、あっさりと追い返されていまった。
 今更授業に出る気にもならず、は仕方なく、屋上で昼寝をすることにした。

 屋上なら教師もそうは来ないし、日当たりもいい。
 制服が少し汚れてしまうという欠点はあるものの、ここ以外に好条件の場所は思いつかない。

 は屋上のドアの死角になるところで寝ることに決めた。横になるのではなく、壁に持たれかかってである。

 10分くらいだろうか、は屋上のドアの開く音で目が覚めた。  入ってきたのは同じクラスの東条百合香。
 今は授業中。ということは、サボリだろうが、彼女がサボるなんて珍しい、というか滅多に無い。

「百合香がサボりなんて珍しいな」

 は百合香に声をかけた。
 不意に声をかけられ、百合香は驚く。しかし、その後直ぐにいつもの調子に戻った。

「貴女、ここで何をしてるんですの?」
「ん? 昼寝」

 百合香の質問に短く答える。

「授業に出なくてよろしいのですの?」
「それは百合香もじゃねーの?」
「わ、私は気分が悪くなったから休んでただけですわ」
「ふーん……ま、いいけど」

 との会話を終らせ、再び寝ようと腰を下ろす。
 すると、今度は百合香の方から声をかけてきた。

「そんなことより、さん!!」
「何?」
「貴女少し馴れ馴れしいんではありませんっ!?」

 は言われたが、キョトンとしていて、何を言われたのか分かっていないような表情になった。

「馴れ馴れしい?」
「ええ、そうですわ。私は他の方たちとは違って、貴女のファンではありませんから、声をかけられて嬉しがることなどありませんの」

 のファンであれば、に声をかけられれば、そりゃ、喜ぶだろう。

「それに! 貴女達は私のことが嫌いなんじゃありませんの!」 
「嫌い? 誰が、誰を?」
「ですからっ! 貴女が私をですわ」

 百合香の言葉に少し考え込む。  確かに、ヒトミにいろいろ嫌味を言ってるから、嫌う要素があるだろうが、この間もヒトミたちに言ったように、自身は百合香のことは嫌いではない。

「ん〜。別に百合香のことは嫌いじゃなけど?」
「貴女……本気で言ってますの?」

 百合香は不信そうに見ている。

「うん、本気。百合香は話かける価値もないって思ったら、話しかけたりしないだろ? それなのに、いちいちヒトミにつっかかるってことは、ヒトミの何かを認めていて、尚且つ、ヒトミと仲良くなりたい。とか思ってんだろ?」

 は自信満々に答えるが、その回答に百合香は呆然をしている。

「だ、誰があんな方と仲良くなんて……。折角元がよいのに、あんな風に無駄にしている方と誰が……」
「ヒトミのことは、元々綺麗だって認めてるんだ? それともヒトミの昔知ってた?」

 否定するつもりが、の言葉を肯定するようなことを言ってしまった。
 は笑顔で百合香のほうを見上げているが、その笑顔がなんだか腹正しく、肯定してしまった自分が恥ずかしく、言葉に詰まってしまった。

「ま、私としてはどっちでもいいしね」

 そういいながら、は立ち上がり、スカートの埃を払う。

「私が個人的に百合香と仲良くなりたいだけだし」

 そういったの笑顔はかっこよくて、可愛くって、仲良くなりたいとストレートに言われたせいでもあるが、何故か百合香は赤くなってしまった。

「あ、これからは出来たら『』って呼んで」

 ヒラヒラと手を振りながら屋上から出て行った。

 残された百合香は、何故、があんなにもてるのは分かるような気がした。


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卯月 静