東方司令部、司令官。焔の錬金術師、ロイ・マスタング。 流した浮名は数知れず。 毎日、隣にいる女性は毎回違う女性。 そして、その副官である、紅一点。リザ・ホークアイ中尉。 ロイの一番近い女性であるにも関わらず、何故か、ロイとの間に噂が流れることはない。 それは彼女の性格上なのかも知れないし もしくは、ロイが絶えず別の女性といるおかげで、女性には困っていないということを知っているせいであるのかもしれない。 関係「大佐……何やってらっしゃるんですか?」 「中尉……いや、その……な?……」 リザに睨まれ、冷汗をかきながら、答える。 「……あ、それが……! そう!将軍に用があってね!! 今から行こうかと思って」 執務をサボろうと思い。部屋を出ようとした。 しかし、その部屋を出る瞬間にリザに見つかってしまったが為に、言い訳も何も出来そうな状態ではなかった。 とっさに将軍のとこに用があるとは行ってみたのだが。 「将軍は今日は、出張でセントラルへ出向かれておりますが」 一瞬で嘘がばれた。 「大佐っ。仕事に戻って下さいっ」 「……はぁ……」 観念して、机に戻るロイ。 毎日の同じような作業をしつつ、リザを見る。 ピシッと軍服を着こなして、背筋の真っ直ぐ伸びた凛としている彼女。 容姿は大概のものが美人と言うだろう。 しかし、彼女に浮いた話は聞かない。 周りに男ばっかりの職場にいながら、全く聞かない。 ハボック辺りとでも浮いた話が出てきそうなもんだが、それもない。 彼女が、リザが誰ともくっついていないというのは、ロイが一番よく知っていることではあるのだが。 「大佐? どうかしましたか?」 「いや……なんでも…………………」 言いかけて、黙り込んだロイを不思議そうに見る。 「大佐?」 「私が触れているときは素直なのにな……」 ロイのその言葉にリザは眉を上げる。 「何をおっしゃってるんですか……」 リザの声は呆れているようだ。 「やはり、この程度では動揺はしない、か。」 「バカなことをおっしゃらずに早く仕事を終らせて下さい」 「ああ、わかってるよ」 そう言い、再び毎回の同じ作業を始める。 「中尉……」 ロイはボソッと呟く。 「今夜は私の家には来ないのか?」 「そうですね。大佐に予定がなく、定時に仕事が終ればお付き合いしてもかまいませんが」 「では、終ったら、外で待っていたまえ」 「わかりました」 女性が、夜男性の部屋に行く。 これが意味することが分からないのは子供だけであろう。 つまりは、そういうことだ。 東方指令部司令官ロイ・マスタング大佐とその右腕である副官リザ・ホークアイ中尉。 二人は男と女の関係なのだ。 ロイが男でリザが女。そういう、男と女という意味ではなく、肉体的に男女の関係であるのだ。 そのことは、ロイの部下であるハボック達は知っている。 知っていて周りは何も言わない。 他の部署の物が、あの二人は付き合っているのかといえば違うと答えるからというのもあるだろう。 二人はあくまで、男女の関係であり、恋人同士ではないのだ。 「大佐……大丈夫ですか?お疲れのようですが」 ロイの腕に抱かれながら、リザは問う。 「ああ、大丈夫だ。最近色々あったからな」 「なら、よいのですが」 「心配は要らないよ。もう少しで情報も手に入れれる」 「そうですか。あまり無理はなさらないように」 「ああ」 そういって、ロイはリザの首元に再び顔をうずめる。 自分がリザを抱きしめているのに、リザに包まれているような。 そんな不思議な感覚。 他の女性といても感じることのないような感覚。 自分はどこまでリザに依存しているのだろう。 彼女との間には恋愛感情というものはないのに。 しかし、そこに上司と部下以上の感情があるのも事実ではあるが。 -END- 戻る 卯月 静(06/02/04) |