【戦国御伽草紙:雪国のかぐや姫】番外編 悪戯
小十郎に見張られながら、何とか政務が終った。
直にがお茶と茶菓子を持ってくるとは思うが、時間も少しあることだし、とを呼びに行くことにした。 「。いるか?」 政宗が部屋に行くとそこには誰もいない。 どうやら、既にティータイムの用意をしに炊事場に行ったのかもしれない。 「はいるか?」 炊事場には数人いたが、はここには来ていないと言う。 時間的にもまだ早いそうだ。がここにお茶などを貰いにくるのはもう少し後らしい。 政宗はそのまま炊事場をでて、城を探してみることにした。 部屋に居らず、炊事場にいないとなるとが行きそうなとこはどこか。 「小十郎」 「政宗様? どうかなされましたか?」 考えていると、正しくいいタイミングに小十郎がいた。 「ですか? 見ておりませんが。」 「そうか。どこかあいつが居そうな場所を知らねえか?」 政宗の問いにしばし考えるような動作をしたのち、小十郎は女中達の部屋で話しているのではないかと答えた。 暇ですることがないときにはよく女中達の部屋で話しているらしい。 これが大名の娘ならば、自らが女中の部屋に行くなどありえないことかもしれないが、は大名の出ではない上に、身分といったことにはあまり執着がないようだ。 気軽に女中の部屋に行くし、たまに仕事を手伝ってたりする。 もちろん回りの人間は政宗の寵姫にそんなことはさせられないと言っていたが、の行動にしだいに慣れ、そう言う者も少なくなった。 それはさて置き、政宗は小十郎の助言通り、女中の部屋に行く。 が、そこにもは居ない。 彼女達曰く、成実と話しているところを見たというから、まだ話しているかもしれないと、成実のところに行くことにした。 この時間であれば、彼は稽古をしているところだろう。 ここまで中々と会えないとなると、成実のところにもいそうにはないが、他に心当たりもないために、道場に向かった。 「さっきまではいたんだけどね」 「そうか……。他に行きそうな場所知らねえか」 「そうだな。小十郎のとこは?」 「小十郎は知らないと言ってた」 「じゃあ、女中の皆と話してるとか」 「さっき行ったが居なかった」 それなら後は分からないと成実は言う。 「ったく、あいつは何処にいるんだよ」 毒づく政宗に、成実は笑って言う。 「意外と殿の部屋にいるとかじゃない?」 確かに、部屋を出てから、自分の部屋には戻っていない。 だが、もしそうなら、今まで散々色んな所を歩き回ったのは何なのか……。 「稽古の邪魔して悪かったな」 政宗は息を一つ吐いて、成実の言うとおり自室に戻ることにした。 もし、そこにが居なくても、待っていれば時期にくるだろうから。 「あ、お帰り」 「………………」 自室に戻ると、探し人はそこにいた。もちろん、お茶と茶菓子付きだ。 ちゃっかり、小十郎もいる。 「あれ? どうかした?」 一気に疲れが来たような気がする。 ドカッといつもの位置に座る。 「お前今まで何処にいたんだよ」 「ずっと政宗の近くに居たけど」 「Ha?」 意味の分からないの答えに、政宗は呆けた声を上げる。 ずっと近くに居た? だが、散々自分はを探していたはずだが。 「政宗の後ろからずっと付けてたんだけど」 「気付かなかった?」と笑いながらは言う。 「てめぇ。後ろにいたならなんで声をかけねえんだ。城中探す羽目になったんだぞ」 本来なら、怒る場だが、呆れた方が強く、怒る気にもなれない。 「いつも振り回されてるから、振り回してみようかと思って」 のちょっとした、悪戯だと、納得できなくはない。 が、次の言葉を政宗にとって意外なことだった。 「これも、協力してくれた皆の誘導のお陰だけど」 どうやら、政宗にいろいろの居場所を提供してくれた人々はの協力者だったらしい。 とすると……。 「小十郎……手前ぇも、ぐるか」 傍にいた小十郎を睨んでみるが、小十郎は涼しい顔で、 「私はの居そうな場所を聞かれたから、教えたまでです」 と答える。 通りでタイミングよく小十郎に会ったはずだ。 「お詫びに今日のお菓子は私が作ったから」 と笑顔で言われると、今までのことはどうでも良くなった。 奥州を統べる竜も、自分の愛する者には弱いようだ。 終 戻る 玄様のリクエストお題。政宗に散々探し回ってもらいました。 卯月 静 (07/08/21) |