唯一になりたいと思ったのは ずっとずっと前からのこと 『伝える想いと伝えられる想い』『シュート!ゴ〜〜〜〜〜〜〜ル!! 藤村成樹!決めました!!』 テレビから流れる実況の叫びと歓喜の声の嵐。 画面の中心に映るのは金色の髪をした 1人のサッカー選手とそのチームメイト。 「よっし!」 は思わずTVの前で拳を握った。 「優勝したねっ!」 「年間優勝っ☆」 コーヒーショップでと有希は昨日あった 試合の話で盛りあがっている。 藤村成樹の所属する京都サンガが 年間優勝を果たしたのだ。 「特に3点目は絶妙だったね。 やっぱり技術の高さは相当だと思った。」 有希は楽しそうにコーヒーのカップを手の中で回した。 「あの技術の高さは憧れるなぁ。」 「有希もサッカー選手だもんね。」 が言うと誇りを帯びた笑みが返ってきた。 「中学の時からずば抜けてセンスが高い。」 「最初は見せてなかったけど、風祭のおかげだね。」 「そうかも。 でも、のおかげもあるんじゃないかな。 あの時期は、特に。」 「私は何もしてないよ。」 答えながらは苦笑して見せた。 「いやぁ、あん時は世話んなったわ。」 「わっ!」 「あ。」 聞きなれた関西弁に2人は顔を上げた。 「いやー、ごっつ美人がおったから思わず入ってもーたわ。」 「・・・よく言うわよ。」 調子よく話すシゲを見て有希が苦笑いを浮かべる。 「それにしても、年間優勝おめでとう。水野が悔しがるわね。」 「ホンマなー。最終戦マリノスやったからなぁ。」 有希とシゲが楽しく話している一方で、 店内ではシゲの登場に控えめながらも賑わっていた。 その様子を肌で感じながらが呟く。 「さっすがJリーガー。注目されてる。」 「そりゃぁ、手ぬぐい貴公子やで。 なんや、。気になるんか? ほんなら別んとこ行くか?」 「いや、別に。シゲがいるだけで注目されるから。」 人の悪そうな笑みのシゲを冷に対処する。 「冗談はええとして、小島。、もらってくで?」 「最初からそのつもりで入ってきたくせに。 しょうがないなぁ・・・。 折角、とエスプレッソ楽しんでたのに。」 クスクス笑いながら有希は答える。 「え?私の意見は聞かれないの?」 「ほな、小島またな。」 「うん。もまたね。」 「ホントに私の意見無視なの?」 「ほな行くでー、。」 「え、ちょっと! あ、有希今度ご飯食べようね!約束!」 「うん、連絡入れる。」 シゲに引っ張られるようにかは店内を後にしていき、 それを有希は楽しそうに見送った。 『背が高いなぁ・・・。』 手を引かれながらは頭の片隅でそんなことを思っていた。 『それに・・・目立つ・・・。』 シゲの金髪は染めているとはいえ綺麗だ。 光に反射してキラキラ光っている。 そんな金髪で歩かれたらサッカー選手であることを 抜きにしても注目される。 『カッコイイし・・・。』 「・・・?なんや?さっきからジッと見て。 俺に見惚れとったか?」 「うん。」 冗談のつもりで言ったシゲに素直に答える。 「そないに言われたら照れるがな。」 「まさか。」 「・・・ホンマやで。」 ニカッと笑ってシゲは繋ぐ手にほんの少し力を込めた。 「ほい、到着ー。」 2人が辿りついたのは海沿いの公園。 遠くには貨物船が見えて広がるのは水平線。 夕方になるにはまだ日が明るくて、それでも ほんの少しだけ空がオレンジに染まっていた。 「。あん時、ありがとうな。」 「え?」 シゲのほうに顔を向けたが 彼は水平線へ視線を向けていた。 何となくシゲと同じものを捉えたいと思って も彼方に広がる水平線へと目を戻した。 「選抜ん時。」 「私は何もしてないよ。 むしろ、ナオキのおかげじゃない。 お好み焼き勝負。」 地域選抜のメンバーが選出された時 その中にシゲの名前はなかった。 技術面でも申し分のないシゲが選出されなかった。 後々松下コーチの意見だったと分かったが、 それでも周りに与えた衝撃は少なからずあった。 勿論、当人であるシゲにも。 飄々と周りの心配をかわしながら平然としていた。 自分の中で燻る感情をひた隠しにして、 気づかないふりをして、見ないようにしていた。 コーチにそれを指摘された、そしてナオキにも説教された。 交わしつづけるシゲの背中を強引に 前を向かせて後ろから押したのはナオキだ。 「私は・・・何もしてないよ。」 これまでの経緯を思い出しても、 自身、自分は何もしていない。そう思えてならない。 力になりたいと思っていたけど、何も出来なかった。 「そないなことあるかい。 どえらい説教してくれたがな。」 「・・・?」 かは首を傾げた。 その時期、確かに何度か話もした。 だが、説教をした記憶はない。 交わした会話も2言3言だ。 その頃のシゲは周りをかわす為に、 のらりくらりと行方をくらましていた。 それ故、遭遇率も低かった。 「なんや、覚えてないんか。 『私はシゲの本気を知らないし。本気のシゲも知らない。』 そないにゆうたやろ。」 「あぁ・・・。」 それは説教に入るのだろうか、 とも思ったがが言ったことは覚えている。 「アレは衝撃やったなぁ。 あんまり知らんとかやのうて、 知らんって言いきったからな。」 「だって・・・知らなかったから。 いつだって飄々としてて、 サッカーしてる時も、一緒にいる時だって。 必死になってるところ、見たことなかった。」 それでも、今は違う。 試合を見ててもそれは感じる。 ゴールに対する執着心も、仲間を鼓舞する時も、 以前にはなかった表情をしている。 「ナオキとのお好み焼き勝負もあるけど、 あの言葉が、一番のきっかけやな。 付き合うとってそれ言われたし。 惚れとる相手に言われるんは、中々キツイ。」 「・・・ゴメン・・・。」 苦笑いをしながら言うシゲには小さく謝った。 「せやけど、助かった。 自分の感情見ぃひんフリするんもこれで終いやと思えた。 サッカー好きな感情もかが好きやゆう感情も、もっと 前に出すべきやってな。せやから、今はごっつ充実しとる。」 「うん。」 は素直に頷いた。 今のシゲは確かにそうだ。 一緒にいても、以前のような感覚はない。 一緒にいるのに、一緒にいる気がしない。 一緒にいるのに、いつもシゲを追いかけている感覚。 今はちゃんと同じ位置に同じ場所に並んで立っている。 それを実感出来るのが、たまらなく幸せだ。 「ホンマは昨日言いたかってん。」 「え?」 「せやけど昨日は祝勝会やらなんやらで結局 バタバタしとったし。そんな隙も暇もなかったわ。」 「うん?」 いきなり話題が変わってはついていけなかった。 話の脈絡もさっぱり分からない。 「、手ぇ出して。両手。」 言われるままにシゲと向き合って両手を差し出した。 「本気でサッカーやりだして、プロになった時から決めとった。 年間優勝果たしたら言おうって。」 「?」 疑問符を頭に浮かべているとシゲが パーカーのポケットから小さな箱を取り出し、 開かれた両手の上にそれを乗せた。 濃紺で肌触りの良さそうなベルベット生地の箱。 「これから先も、俺の隣りにおって欲しい。 、結婚してください。」 覚悟を宿した表情。 本気の表情。 そして とても綺麗な笑顔。 どれもの好きなシゲの表情だ。 それが今 自分だけに向けられている。 「はい。」 その幸せを全身で感じながらは笑顔でそれに答えた。 end 【後書きというなの言い訳】 夢交換と言うことで、リクのシゲ夢。 両方中学設定だと同じ雰囲気になりそうなので、 こちらは未来Ver。シゲはサッカー選手ですよ! 佐助さんが婿にきてくれたので、対抗してこちらは 三上んとシゲをセットでお嫁にいかせます(笑) 俺様の愛を受け取ってください(笑) 京ちゃんからの、交換夢第一弾です。未来ver.のシゲですよ!!あれです、年齢的にジャスト!!なんです!!!しかも、プロポーズとかっ!! シゲが旦那様何て素敵!!!! バッチリ愛を受け取りました!!!ありがとう!! 卯月静 戻る |