ザ・テンペスト 【 queen's weather 】 本日は快晴なり。言うまでも無く絶好の洗濯日和。 ここ数日は雨や曇りが続いていたために、今日はいろんな家で洗濯物が干されていることだろう。 きっと布団も干されているに違いない。 晴れの日が少ないと世の奥様方は洗濯をする機会を失って、洗濯物が増えるいっぽう。着れる着物は減る一方。 そんな中の晴れの日なのだ。今日やらずして、何時にやる!といった感じである。 ようはそれだけとても気持ちのいい、清々しい晴れの日だということだ。 きっと、洗濯物も良く乾く。 布団も日の光を浴びて、今日はお日様の匂いのするふっかふかの布団で寝れるに違いない。 そんなわけで、此処、真選組でも状況は同じ。 洗濯場には溜まった洗濯物が沢山。 「うっわー……。すっごい量……」 その山を見て、はうんざりする。 基本的に隊士は自分で洗濯する。 襦袢くらいなら問題はないが、下着なんかを一応女の子なに洗わすわけにはいかない。ということで、各自で洗っているのだ。 だから、が洗濯するのは大概は手拭い類だ。 それでも、稽古は毎日やっているし、数日洗濯できなかったし、それにアイロンをかけるとなるとかなりの仕事量にはなる。 こでがの仕事だから別に構いはしないのではあるが。 まずはさっさと洗濯を終らせようと、洗濯機にいれ、回す。 2回に分けて洗濯した後、そとに干す。 「よし! 次は……っと……」 今は丁度隊士達は殆ど出払っている。 数人は屯所に留守番をしてはいるが、殆どはいない。 「折角の天気だし……。布団でも干すか!」 人のいない間に布団を干してしまおうと決めた。 そうはいっても全員のは無理だから、今日はひとまず。幹部くらいのでいいかと部屋に向い、どんどん干していく。 部屋はそれぞれ個性がある。 散らかってたり、外見に似合わず綺麗だったり。その人らしさとゆーか、意外とゆーか、様々だ。 は総悟の部屋の前に立つ。 沖田は結構綺麗そうだと思いつつ、部屋の襖を開ける。 そして。 ピシャッ。 即効閉める。 「あー…………。総悟のは今度でいっか……」 沖田の部屋は見なかったことにして、土方の部屋に向かう。 土方の部屋はなかなか整頓されていた。 机の上にはヘビースモーカーの彼らしく、吸殻の山があった。 押入れから布団をだす。 するとドサッといった音と共に本が落ちてきた。 「なんで、こんなトコから本なんか……」 はその本を手に取り裏返った本を表に返す。 「……………………」 数十秒間そのまま固まり、しかし、再び我に帰る。 土方も男だし、ここは男所帯だし、人の趣味をとやかく言う権利は自分にはない。 こーゆー本に遭遇するのも初めてではないし、キャー! とかといって恥らうようならここではやっていけない。 土方さんの部屋で見つけるのは意外だな。と思いつつ。でも、隠し場所が中学生並みと貶しつつ、一先ず、本は机の上に置いて、布団を外に干した。 「さぁって、次々!!」 残る最後は近藤の部屋。 案の定、予想に違わず散らかっていた。 「近藤さん……散らかしすぎ……」 その上、本棚には『愛のメモリアル』とタイトルの書かれたアルバムが。 その内容は見なくても分かる。 近藤さんの想い人の女性の写真に違いない。しかも、隠し撮りが殆どだろう。 「ストーカー法が無くてよかったね、近藤さん」 ストーカー法なんてものがあったら、間違いなく近藤さんは刑務所行きだ。 警察であろうと、なかろうと関係ない。 しかも、近藤のことだから堂々と認めるだろう。罪をではなく、ストーカーをしていたという事実のみは。 近藤さんがこれ以上犯罪に走らないように(すでに犯罪に両足をつっこんではいるが)アルバム類を全て没収する。 ただ残ったのは机の上にあった写真たての写真のみ。 そして、そのあと押入れの布団を外に干した。 帰ってきた隊士達は部屋にふかふかの布団と清潔な手拭いがあることに、やっぱり女の子がいると違うなぁ〜と改めて、実感していた。 ある二名を除いてだが。 その夜。 近藤の部屋からは絶叫が聞こえ、鬼の形相をした土方とからかう沖田の追いかけっこが始まったのは言うまでもない。 終 戻る 卯月 静 (06/09/18) |