ザ・テンペスト
【 training 】



 やることが過激で、チンピラ警察と言われている真選組。しかし、彼らが相手にするのは、攘夷浪士。中には過激派と呼ばれる奴等もいる。
 つまり、日々の訓練を怠るわけにはいかない。敵と相対する時は、命がけなのだ。
 そして、今日も、屯所の道場からは、気合の入った声が聞こえる。

「だらしねーぞっ!! これくらいでバテてんじゃねー!! 次っ!!」

 鬼の副長にしごかれて、隊員達は道場の周りで座り込んだり、寝転んだりしている。

「次って言ったって、もう誰もいませんぜィ。人すら認識できねーようじゃ、もう、土方さんは終わりですねィ。さっさと引退したらどうですかィ」
「まだ、残ってるだろーが」
「幻覚でも見えてんですかィ。可哀相に、マヨネーズの食べすぎで、頭までいかれてしまいましたか」

 やれやれといった、態で答える沖田を見て、土方の額には青筋が浮かぶ。

「手前ぇーがいるだろーが、てめーがっ!!」

 土方が怒鳴るものの、沖田は五月蝿いと耳を押さえている。それでも、鍛錬しないわけにはいかないし、沖田は渋々木刀をとる。




 既に鍛錬ではなく、罵り合いの喧嘩になっている沖田と土方。その途中で、の声がかかる。

「土方さーん、近藤さんが呼んでますよ」
「おう、今行く」

 沖田の相手をしていたが、局長である近藤からの呼び出しとあれば無視するわけにはいかない。沖田も呼んだ相手が近藤だからか、特に茶々は入れなかった。
 しかし、隊士達はバテてしまっていて相手にならないし、自分を指名した土方は居なくなった。折角ノってきたところだというのに、つまらない。

「それじゃ、総悟。鍛錬頑張ってね」

 手を振り去って行くの襟首を掴む。

「あのー、沖田さーん。これは一体なんですかー」
「俺の練習相手が居なくてねィ。土方さんが居なくなったのはが呼びにきたからだろ。だから、俺の相手しろ」
「ちょっ! 呼んだのは近藤さんじゃん!」
「呼びに来たのはじゃねーか」
「いやいや、無理無理!!」

 全力で拒否するを気にせず、沖田は襟首を掴んだまま、ずるずると道場の中に連れて行く。とにかく誰か助けてくれと、道場の周りをみるが、皆ヘバっている上に相手が沖田とあっちゃ、触らぬ神に祟り無しといった様子だ。

「総悟、私素人だから! 素人!!」
「ほれ、木刀。それで頑張って防ぎなせェー」

 沖田は心底楽しそうな顔をしている。ドSな彼に、嫌がる表情は逆効果なのだろうか。だが、反対に喜んでも沖田は止めないに決まっている。

「行くぜェ!」
「嘘!! 無理! 待った!! ギャーッ!!!!」

 沖田は笑いながら、打ち込んでくる。は、なんとか、それを防ぐ。真剣ではないが、木刀で叩かれたら、たんこぶどころじゃ済まないに違いない。

「隙がありすぎだぜィ」
「ギャーッ!!」

 は必死で逃げる。そして、道場を出て、屯所の廊下まで来た。
 それでも、沖田は追いかけて来、更に打ち込まれる打撃を必死で防ぐ。

「一発くらい当たったらどうでィ」
「イヤっ、に決まって、るでしょー!!!」

 沖田の打撃のスピードが段々と上がる。辛うじて防いではいるが、沖田は楽しんでいるようで、口元は弧を描いている。

「うるせぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 どうやら、局長室の前まで来たようで、土方に怒鳴られた。
 そのあと、必死で弁解してみるも、正座をさせられ、こっ酷く怒られる羽目になった。


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卯月 静 (09/02/10)