girasole
【09】
大学の講義が終わり、門を出ると、何故か高級車が停まっていた。学生達は皆、興味津々で、遠巻きにその車に視線を寄こしては、そこを通り過ぎている。
はなんとなく、その車の持ち主が誰なのか、誰に用事があるのかが分かってしまった。
「ー」
車の持ち主であろう金髪の青年は、手を振っている。
「ディーノ、どうしたの?」
「折角、会ったんだから、デートしようと思ってな」
ディーノは、デートする気満々らしく、後部座席のドアを開けている。
断る理由もないから、は車に乗り込む。周りの視線はとても痛い……。その視線には、友人もいたから、明日辺り質問攻めにされるだろう。
「、どこか行きたいとこあるか?」
「えーっと…………」
平日の午後だからか、意外と人は多かった。昼間なら、もっと人はまばらなのだろう。
「はい、これ。大丈夫?」
ベンチに腰掛けるディーノに、ペットボトルを差し出す。
今、二人は遊園地に来ていた。どこか行きたいとこと聞かれたが、デートする場所なんて思いつくわけもなく、とっさに遊園地と答えた。
で、三連続で絶叫系のアトラクションに乗ったのだが、ディーノはダウンしてしまった。
「ごめんね」
「いいって。が気にすることはねーよ」
まだ、少し顔色が悪いが、ディーノの笑顔をみると自然とも笑顔になる。
こうやって、日本で、ディーノと一緒にいるのは、なんだか不思議な感じがする。
「何笑ってんだ?」
「日本で、ディーノといるのは不思議だなって」
不思議だといいながら、はとても幸せそうに笑っている。その為に、ディーノは照れて、視線を外してしまった。幸い、は、ディーノが視線を外したことには気がつかなかったようだ。
「つ、次は何に乗るんだ?」
照れてしまったことを気づかれないように、話題を変える。
「じゃあ、最後にアレ乗ろう?」
が指差したのは、観覧車。
ディーノは立ち上がり、に手を差し出す。
はにかみながら、は手を取った。
「ディーノ、今日はありがとうね」
「喜んでもらえて光栄だな」
ディーノは明日にはイタリアに帰るらしく、また暫く会えなくなるらしい。
家についてしまったから、これでデートもお終いだ。
「あー、もうっ! そんな顔すんなよ。イタリアまで連れ帰りたくなるだろ」
はよほど寂しそうな顔をしたのか、ディーノは苦笑いをしている。
「また、電話やメールするから」
「うん」
ディーノは、の手を引き、腕の中に抱きいれる。そして、軽く、額に口付けを落とす。
は、キスされるかと思ってしまった為に、少し拍子抜けしていたら、今度は唇にキスを落とされた。
「ti amo」
「わ、私も好きだよ」
の返事を聞くと、腕の力を緩め、部屋に入るように促した。は顔を赤くしつつ、家に入った。
「へなちょこも、ちょっとは男らしくなったみてーだな」
「リ、リボーンッ?! お前、今の全部」
「ああ、見てたゾ」
表情も変えず言う、自分の家庭教師に、一部始終を見られていたことを知り、顔を赤くする。
「を不幸にしたら、もれなく獅子の制裁が待ってるからな」
「…………脅しか?」
「助言だ。ありがたく思え」
リボーンの言葉に、ディーノは溜息をつく。の叔母である奈々には今回会った。そして、いずれは、の叔父にも挨拶に行くべきだろう。
さすがというか、なんというか、の叔父はディーノとの関係を既に知っているようだ。
「……分かってるよ。のこと頼むぜ」
そういって、ディーノは車に乗り込んだ。
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卯月 静 (09/03/03)