girasole
【15】
最近、ディーノは前にも増して寝不足なことが多くなった。
それもそのはず、ディーノのベッドでと一緒に寝てから、は恐い夢を見る度に、ディーノの所にくるようになった。
何も知らずに、スヤスヤと眠る女性に手を出すほど飢えてはいないが、惚れた女が隣で寝ていて、平然としていられるほど淡白でもない。よほど疲れていれば、が隣にいても、その温もりだけ抱いて眠ることもできる、が、毎回毎回そういうわけでもない。
断ってしまえばいい、だが、恐いからと自分の所に来たを追い返すこともディーノは出来なかった。
できれば、の記憶が戻るまで、自分の理性が外れなければいいと切に願わずにはいられない。
「ボス、少し仮眠取るか?」
「ああ、悪い、ロマーリオ。30分経ったら起してくれ」
あまりに眠そうなディーノを見かねて、ロマーリオが提案すれば、彼はソファーに横になり、あっと言う間に眠りについた。
ディーノはの為に、いろいろと無理をしている。この状態が長く続けば自分達のボスは体を壊すのではないかと心配だ。
が、ディーノのことを誑かしている性悪女であれば、彼女をこの屋敷から叩き出し、今後一切ディーノに会わせないようにする。だが、はそんな女とは正反対で、部下達自身も彼女を気に入っている。それに、彼女が同盟ファミリーであるボンゴレ関係者となれば、尚更追い出すなんてことはできない。
「ディーノお兄ちゃん、おかえりなさいっ!」
「ああ、ただいま」
夜に外出先から帰って来たディーノを、は笑顔で迎える。いつも、どんなに帰りが遅くても、はディーノを出迎えていた。眠くて一度広間のソファーで寝てしまっていたのを、帰って来たディーノは、そっとベッドに移動させた、すると、次の日にどうして起してくれなかったのかと拗ねられた。だから、彼女が寝ていても帰ってきたら、必ず起すようになった。
だが、今夜は少しディーノの雰囲気が違う。いつもなら、迎えたをハグするのだが、今回は、彼女の頭を軽く撫でただけで、部屋に戻ってしまった。
は、何か自分がディーノに嫌われるようなことをしたのだろうかと心配になり、ディーノの部屋に向かった。しかし、扉の前では彼の部下が居て、入れることは出来ないといわれる。
「どうして!! いつもは入れてくれるでしょ!」
「ですから、ボスは今お休みになってて……」
扉の前で、押問答をしていたら、扉が開いてディーノが出てきた。
「、今日は部屋に戻ってくれ」
「どうして? 、なにか悪いことした?」
「そうじゃない、頼むから……」
「やだっ! はディーノお兄ちゃんといるのっ!」
ディーノは一歩も譲らないを見て、部下に下がるように言う。
「ですが、ボス……」
「…………大丈夫だ」
心配そうな部下を半ば無理矢理下がらせた。
そして、それを見たは、まるで勝ち誇ったように、ディーノの部屋に入る。
しかし、直さま、は引っ張られ、扉に背を押し付けられる。
とっさのことで、は驚くだけで、言葉がでない。自分を押さえつけているのはディーノで、しかし、彼をみると、その瞳がいつもの優しいディーノではなく、体が強張った。
暫く、を見下ろしていたままだったディーノだったが、彼が動いたと思うと、の首筋にチクリとした痛みが走った。
それは、首筋ではなく、鎖骨、胸元と位置を変える。
次に、の着ていたワンピースの裾がたくし上げられ、つーっと手が太もも這うのを感じた。
それと同時に、は恐いと思った。
「や、だ…………やめて、ディーノお兄ちゃんっ!!」
が叫ぶと、ディーノの動きが止まる。そして、驚いたような、だが真っ青な表情でを見ている。
は涙を溜めたまま、逃げるように、ディーノの部屋から出て行った。
「…………やっちまった…………」
深い溜息とともに、呟きながら、ディーノはその場に座り込んだ。
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卯月 静 (09/03/31)