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JOKER #1 −扉を開けるとそこには何もありませんでした− 「ただいまー。ってあれ? 母さーん?」 家に戻ると、静かでだれもいなかった。 いつもなら母親がいるはずなんだが。 「ったく。どこにいるんだか。買い物、かな?」 別に違和感があるだけで、困るわけではないのでそのまま部屋に行った。 「……………………なんで……?」 一言ボソッと呟く。 それも無理はない。部屋にあったはずの家具から小物まで何もない。 引越し前のワンルームの部屋の状態。 「あー……。どーしろと?」 とりあえず、リビングに行けばなにかあるかもしれない。そう思い部屋を出てリビングに向かう。 案の定、リビングのテーブルに封筒が一つ置いてあった。 見てください。といわんばかりに主張している。 だが、この封筒から嫌な予感がするのは気のせいだろうか……。 見なけりゃ何も始まらないが……。 「しょーがないか……」 そういって、手紙を開けた……。 『可愛い愛娘のへ 母さんと父さんは一年くらい旅行に行ってきます。 家に一人で残すのは心配なので、母さんの友達のマンションに住まわせてもらうことにしてあるから。 小さい頃よく遊んだ桜川さんとこよ。』 「可愛い愛娘」と書いてあるのが白々しく思えるような文面。 確かに、高校生が一軒やで一人暮らしはいろいろ無用心だろうから、両親の取った行動は正しいのだろう。 しかし、娘が帰ってから、直に話すという考えは起きなかったのだろうか……。 学校から帰ったら家具がないなど、普通なら驚いて、手紙など見ないかもしれないのに。 「そこらへん、私の性格知ってるってことか……」 ここで、考えてもしょうがない。新しく住むところが決まっているというなら、そこに荷物はあるのだろう。 それに、母さんの友人の桜川と言う人のことも覚えている。 今でこそ自分と、交流はないが、小さい頃はよくつれていかれて、遊んだ。 確か、あそこには自分と同じ歳の女の子といくつか年上の兄がいたはずだ。 子供モデルもしてて、素直で可愛かったと記憶している。 あのまま真っ直ぐ育っていれば、さぞいい子になってるだろうな。と思う。 娘に黙って、しかも勝手に決めた親達に文句はいろいろあるが、これじゃ生活ができない。 しょうがなく、は新しい住み場所を訪ねることにした。 次へ 戻る 卯月 静 |