JOKER #2 −人は根本的には変わらないし変われない−



「ここ……か……」

 学園近くのマンションをは見上げていた。
 出来てそれほど経っていないようで、建物は新しいようだった。

「管理人は最上階。っと」

 親が置いていったメモを確認しながら、エレベーターに乗る。
 エレベーターが目的の階につくと、その先に『桜川』とプレートのある扉を見つけた。
 ここに管理人がいるのだろう。

 前回会ったのはそうとう昔のことだし、今の自分を見てもきっと分からないだろうなぁ。と苦笑しつつインターホンを押した。



  がインターホンを押した時、丁度鷹士は夕食の用意をしていた。

「悪い、ヒトミ。ちょっと出てくれ」

 言われて、ヒトミは玄関に向かう。

「はーい。今開けまーす」

 ヒトミがドアを開けたそこには、黒髪の美少年がいた。
 少年と言ってもカッコイイタイプではなく、どちらかと言うと可愛いといったタイプだ。

「どちらさまですか?」

 ここに、しかも見覚えのない少年が訪ねてきたのだから、戸惑うのも無理はない。
 ヒトミはここに来る予定の人がいたかどうか、考えたが、全く思い当たらない。

「えっと、今日からこちらにお世話になる予定のですが……。何か、聞いてません?」

 と名乗った少年の声は少し高めで、どっちかというと少女の声のようだった。
 名前を名乗ったが、ヒトミに何も思い当たるところがなく、不思議そうな顔をした所為か、困ったように笑いながら言葉を付け足した。

「ちょっと待ってて下さいね。兄なら何か分かるかもしれないので」

 そういってヒトミは奥に引っ込む。

 ちゃんと連絡が行ってなかったかな?今日寝るとこないと困るな。などと少年、もといは考えていた。

 先ほどでてきた少女がヒトミだろう。
 小さなころの面影は全く無かったが、それは自分だって大分変わっているからお互い様だ。
 姿こそ変わってはいたが、雰囲気というか、表情というか、そういうものは変わっていなかった。
 でも、ヒトミはどうやら自分には気付かなかったようだ。
 それも無理はない。今の自分はよく少年に間違われるくらいの容姿をしてるし。それに比べて、小さい頃は……。

!!! やっとついたんだな!!………………なのか?……」

 奥からバタバタと急いで鷹士が出てきた。
 が、を見た瞬間、驚き、そして固まった。

「お久しぶりです、鷹士さん」

 鷹士は全く変わってないなぁ、とのんきに思いながら、笑顔で彼の質問を肯定した。

 その瞬間、鷹士は声も発さず、ただ口を開けたり閉めたりしていた。
 その後ろで、ヒトミは不思議そうに自分の兄を見、は相変わらず笑顔のままでいた。

 そしてその数秒後、このマンションの管理人であり、の昔馴染みである目の前の青年は大声で叫ぶことになる。


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卯月 静