JOKER #4 −第一印象は大切です−



 休日。
 誰にも邪魔されないで、唯一ぐっすり惰眠を貪ることの出来る日。
 たまの休日くらいゆっくりさせてくれ。という世のお父さん方の声ではないが、は部屋のベッドでごろごろしていた。

「うるせぇ……」

 このマンションは学校に近いといえど、住宅地に建っていて、静かなはずだ。
 普段頻繁に往来のある平日と違い、休日は閑静な住宅街に代表されるはずの場だ。

 しかし、先ほどから車の音が絶えない。
 いや、車の音ではなく、あれはもっと大型のものだ。トラックか何かの……。

「くそっ! 人の安眠を邪魔するなんて、いい根性してんじゃん……」

 この五月蝿さも、鷹士に聞きゃ分かるはずだ。
 仮にもここのマンションの管理をしてるのだから、分からないはずがない。
 はベッドから起き上がり、パーカーとジーパンに着替える。
 折角ぐっすり眠れると思っていたのに、それを邪魔されたのだ、元凶に文句を言えなくても、せめて鷹士には言わないと気がすまない。


 管理人室の前に行くとそこには人が集まっていた。
 遠目からだが、そこにはヒトミと鷹士がいるらしかった。
 その周りにはと同じ年頃の男の子が数人。全員何か珍しいものを見たかのような表情をしていた。

 気配を消して近づいたわけではないが、誰もには気付いてなかった。それはヒトミもそして、あれだけ五月蝿い鷹士も同じだった。

 話を聞く分には彼らは同じ学園の人気上位者達のようだ。
 確かに顔はいいし、何人かは見覚えのある顔だった。
 そして、彼らは今日からこのマンションに越してきたとのこと。
 住人が自分を含めて3人しかいないことに比べれば幾人か他の住人がいた方がマンションらしくはなるだろう。
 引越しのためのトラックの往来のための騒動。それならば、多少の騒音も許すか。という気分になった。
 彼らが引っ越してくることを知らせなかった鷹士にはそれなりに何かする必要があるが。

 なにはともあれ、引越しの騒音であれば、自分がクレームをつける必要はない。
 そう思って部屋に再び寝に帰ろうと思い。くるりっと背を向けた。

 が、後方から聞こえてきた言葉に足をとめ、夢の国への旅のことなどすっかり飛んでしまった。

「お前だよ、お前。一人でなに幅とってんだ? さっさとそこをどいてくれ」

 ずいぶん偉そうじゃねーか……。

 は再び彼らの方に向いた。
 彼らの様子を観察する。彼らの誰も、ヒトミでさえも、まだには気付いていない。

「ま、たしかに君、痩せてるとはいえないけどさ、それっていわいる個性だし、気にする事ないよ」

 フォローになってないのわかって言ってんのか?

「……すっげぇ……そのサイズの制服って、あるんだ。俺……初めて見た」

 ちったぁ、女心を考えて物言え一年坊主。

「君……………………じゃ、これからよろしくね」

 言い始めたらやめんなよっ!

 皆思い思いに言っては去って行く。

 彼らに立て続けにあんなことを言われれば、ヒトミはさぞかしショックを受けているだろう。
 はヒトミを励まそうと近くに行こうとしたが、まだ、紹介してないやつが1人いたらしい。
 ヒトミのそばに来て、名乗っている。

 今までの四人の発言が発言だっただけに、こいつももし、変なことをヒトミにいったら喧嘩でも吹っ掛けようかと物騒なことを考えていた。

「やっりー、結構迷ったけど、やっぱここに決めて大正解!」

 しかし、聞こえてきたのは予想してたのとは違う種類の、とても友好的な言葉。

 1年の深水颯太意外はヒトミはもとより、の中の印象も最悪になった。


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卯月 静