JOKER #8 −病人の傍では静かにしましょう−



 保健室に行ったから大丈夫だろう、と思いあのまま教室に戻ったが、結局ヒトミは倒れてしまった。
 今ヒトミはベッドで寝ていて、鷹士が傍に付いている。
 ヒトミが倒れたという連絡を受けてからの鷹士の慌てっぷりといったら……。
 はチラッと鷹士のほうを見て、溜息をつく。

「ん……」
「ヒトミッ!!!」

 ヒトミが目を覚ました途端、鷹士はまた騒ぎ始める。

「えっと……」

 ヒトミは今の状況を把握していないようで、不思議そうな顔をしている。

「倒れたんだよ。腹へりすぎてさ」
「あ……そういえば……」

 ヒトミも目覚めたことだし、もうそろそろ戻ってもいいだろう。

「ヒトミー、鷹士ぃー。私そろそろ、戻るから…………って聞いてないな……」

 一言かけてからを思い声をかけたが、二人は(というより鷹士が)なんだか熱く燃えているようで、の言葉は聞こえていなかった。
 今日何回目になるのか分からない溜息をつき、部屋を後にした。




 部屋に戻るとベッドに寝転がる。
 先ほど、ヒトミを鷹士が話していた内容は全て聞こえたわけではないが、どうやら、ヒトミが本気でダイエットするようだ。
 昔のヒトミを知っているにしてみれば、痩せたヒトミはとっても綺麗になるだろう。

「いろんな男がほっとかないだろうな」

 苦笑ししつそんなことを呟く。
 ヒトミが綺麗になって、男達が寄ってくるようになれば、きっと鷹士も五月蝿くなるに違いない。
 あの鷹士のことだ、ヒトミが彼氏を連れてくれば。

「ヒトミと付き合いたいなら、俺を倒して、交換日記から始めてもらおう!!」

 ってくらい言うだろう。
 いとも簡単に想像できる辺りが尚おかしい。
 これからヒトミが変わっていくにつれて、周りの反応も変わるだろう。
 それはそれで、楽しみだと思うし、ひょっとしたら、ヒトミの未来の彼氏はこのマンションの誰かになるかもしれない。
 そうなったら、なったで、面白い。
 思いつつ、は深い眠りに付いた。


次へ 戻る

卯月 静