JOKER #9 −助けてくれた人がイイヒトとは限らない−



 学校帰りに買い物をして帰るのがの日課だった。
 料理をいつもするわけではなく、なにより、鷹士の帰りが遅いときは、半強制的にヒトミと夕飯を食べることになる。
 もちろん、鷹士がいたとしても、頻繁に一緒に食べる機会が多く、夕食を作ろうと思っていても作らなくてすむ時が多々ある。
 そのため、買いだめなどしていたら、食材が無駄になることは間違いない。実際、マンションに越してきてすぐの時はいくつか捨てる羽目になった。

 そういった事情もあり、買い物は放課後にすると決めていた。
 今夜のご飯になるものを買って、マンションに足を向ける。
 帰り道の途中にある、公園に差し掛かったとき、話声が聞こえてきた。
 公園なのだから、話し声くらい普通だが、その声が大人の男性。しかも複数だったために、は不思議に思った。

 気になって公園を覗いてみると、男子生徒が複数の男に囲まれていた。
 会話の内容までは聞こえないが、どうみても井戸端会議のような、会話をしてるようには見えない。
 男達はどいつも、黒のスーツにサングラスといった格好だ。

「助けた方がいいのか……?」

 絡まれているというのなら、助けてやるべきなのだろうが、雰囲気的にいまにも喧嘩が始まりそうだというものでもない。
 だからといって、ここで、帰ってしまっても気になるだけだが。

「はぁ……しょーがないか……」

 覚悟を決めて集団のいる方向に向かう。

「なんだ、こんなトコにいたのか」

 が声を発したとたん、その場にいた者は全員の方を見た。
 その場にいる者全員が、まさか声をかけられるとは思っていなかったようで、皆驚いているようだった。
 なかでも、驚いていたのは男子生徒自身で、何故がここにいるんだと言わんばかりだった。

 男子生徒が振り向いたおかげで始めて誰なのか知った。
 同じマンションで学園人気No.4、橘剣之助。

「ったく。約束くらい覚えておけよ」
「アンタ……なんで、ここに……」

 驚く剣之助には気にせず、近くまでいく。

「若の知り合いか?」

 『若』と言う言葉には眉をひそめた。
 しかし、この男達がさしている『若』というのは十中八九剣之助のことで間違いはないだろう。

「橘の知り合いだけど?」

 の返答を聞くと、男達は互いに目配せをし、その場から離れていった。

「さてっと」

 男達はいなくなると、は剣之助に向き直った。

「だいたい、予想がつかねーわけじゃねーけど。何で『若』?」

 聞いた途端に、剣之助は焦り始める。

「よ、予想ついてんなら俺が話す必要ないじゃないっスか……」
「当ってんのかわかんねーから聞いたんだけど、私の予想のままでいいつーなら、何人かに確かめないとなぁ〜」

 何人かに確かめる=言いふらすと言っているようなものだ。
 のその反応に観念したのか、剣之助は話すことにした。
 あのまま、あの男達が帰ってくれないのも迷惑だったが、こっちはこっちで厄介だ。と溜息をつきながら。

 結局、に洗いざらい話してしまった。


次へ 戻る

卯月 静