JOKER #10 −帰りは複数で帰りましょう−



 は登下校は大体ヒトミと一緒の時が多い。
 ヒトミは演劇部で、は帰宅部。
 ヒトミが部活がある日は例外だが、それ以外は一緒に登下校をしている。
 というのも、全ては鷹士がシスコンなせいで。
 同じ学校に通うようになって、最初の日、は一人で帰ってきた。
 同じマンションだが、にはの、ヒトミにはヒトミの付き合いがあるからと思い、一人で帰ってきたのだが。
 帰ってみると、泣きつかんばかりの勢いで鷹士に詰め寄られた。

っ!! ヒトミはどうしたんだ!!! 一人で帰ってきたのか? 帰り道何も起こらなかったか? 変なやつに声を掛けられたとかないかっ? ああ、ヒトミも一人なんだよな。 どうしよう、一人で帰って来てたら、変なヤツがヒトミをさらったり!! こうしちゃいられん、っ! ヒトミを迎えに行くぞ!」

 と、いった具合。
 結局、鷹士に押し切られ、ヒトミを向かえに行く羽目になった。

 もちろん、その後鷹士には散々いろいろ言われ、結局ヒトミの部活が無い日は二人で登下校することになった。
 で、今日はヒトミの部活がない。だから、ヒトミと帰るのだが、肝心のヒトミが見当たらない。

「どこ行ったんだろ? 鞄は……あるから、帰ってないんだろうけど。ちょっとその辺探してくるかな」

 校内はまだ、ちらほら人が残っていてる。
 部活をやっている生徒が大半のだろう。
 グラウンドではサッカー部が練習をしていて、その周りには女の子が群がっている。

「物好きだな」

 キャーキャー言っている女の子達の心境が分からない。
 チラッと、見ただけで、は再びヒトミを探すことにした。

「ん?」

 ヒラリッと足元に一枚の紙が飛んできた。

「『部活動活動報告書』?」

 これはどこから飛んできたんだろうか。
 視線を上げると、生徒会室だった。

「あそこからかな?」

 紙は見たところ、生徒会関係の書類のようだし、きっとあの部屋から飛んできたんだろう。

「すいませーん……あ、ヒトミ」
「あれ? ちゃん? どうしたの?」
「どうしたのって、それ私のセリフなんだけど……」

 生徒会の扉を開けると、そこにヒトミがいた。
 どうやら、書類を手伝っているようだ。

「ま、いいか。これ、落ちてたんだ」
「あ、本当だ、一枚足りない。ありがとう、ちゃん」
「どういたしまして。で、ここで何やってるんだ?」
「あ、それはね」
「桜川は俺の手伝いをしてもらっていたんだ」

 ヒトミが答えようとして、後ろから遮られた。
 振り返ってみると、立っていたのは、一ノ瀬蓮。

「ヒトミ役に立ってるんですか?」

 が思ったことを素直に声に出すと、ヒトミが抗議の声を上げる。

ちゃん、ヒドイ!!」
「簡単な仕事だからな」
「先輩もヒドイ……」

 蓮はことも無さげに答えた。

「桜川、そこで、沈んでいないで、コレを職員室に持って行ってくれ」

 と連に言われ、落ち込んでいたが、仕事を言われ、素直にヒトミは職員室に向かった。

「センパイ、まだ仕事残ってるんですか」

 ヒトミの姿を見送りながら、尋ねる。

「あと少しだ」
「手伝いましょうか?」
「いや、もう、終るからいい。桜川と帰るんだろ」

 そっけなく答えつつも、蓮は書類から目を話さない。

「ヒトミが戻ってくるまでと思ったんですけどね」

 ヒトミが戻ってこないと、それまで、することがない。ついでと言ったらなんだが、それまで手伝おうと思っていた。
 しかし、あっさり断られてしまった。
 仕方ないから、蓮の仕事の様子でも眺める。
 蓮は全く気にせず、仕事を進めている。

「センパイ……もっと、休んだ方がいいですよ。そのうち倒れますよ」
「体調管理が出来ない程バカじゃない」
「夜、相当遅くまで起きてるみたいですけど?」
「睡眠は十分にとっている」
「ならいいですけどね。たまには人に頼ることも必要ですよ」
「余計なお世話だ」
「ただいま〜」

 ヒトミが戻ってきたので、話はそこで、中断し、帰ることにした。

「先輩、お先に失礼しますね」

 ヒトミが蓮に挨拶をし、も続いて、教室をでる。

「今日はさっさと寝た方がいいですよ」

 と言い残して。


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卯月 静