JOKER #12 −仲良くなるには積極的に−



 終業のベルが鳴る。
 はベルが鳴り終わると共に、百合香の席に行く。

「百合香ぁ〜。今日暇? お茶しない?」
 いつの時代のナンパだといいたくなるような、誘い方で百合香をお茶に誘う。
 のその誘いに、百合香は怪訝そうな顔をしれて答える。

「どうして、私が貴女をお茶なんてしないといけませんの」
「私、百合香と仲良くなりたいっていっただろ? だから、まずは仲良くなる為に一緒にティータイムかなって思ってさ」

 百合香の返答を気にせずにはウキウキと話を進めて行く。

「どこのケーキ屋さんがいいかな。駅前のでもいいけど……あーそういや、商店街に新しくできたんだっけ、うん、そこがいいな」
「ちょっと、まだ私は貴女の誘いを受けるとは言っておりませんわ」

「はい?」
って呼んで。折角友達になるんだからさ」

 とは笑顔で話しかける。

「では、さん。私の答えを聞かずに誘うなんて少しばかり強引ではありません?」
「そこは否定はしねーけど……。百合香は断るつもりないっしょ?」

 と自信満々に答える。
 そのの様子を見て、百合香は溜息をつきつつも、何故か怒る気にもなれず、仕方なしに一緒にお茶をすることを承諾した。

「そこまで言うなら仕方ありませんから承諾して差し上げますわ」

 あくまでも高慢な態度には笑ってしまう。

「時田も一緒にどう?」
「私もですか?」
「そ。用事とかあるんなら無理にとは言わないけど」
「いえ、今日は何も用事がありませんからご一緒させてもらいますよ」




 最初に言っていた、最近できたケーキ屋で数時間話をした3人。
 庶民の店にしては中々の味。と百合香が言ったくらいで、味は文句の付けようのないくらい美味しい店だった。

 百合香を家までおくり、楓と共にマンションに戻る。

「時田って、百合香と仲いいよね? 百合香も別に嫌がってるようでもないし」
「東条さんには転校してから隣の席ということもあって、いろいろ親切に教えてもらいましたから」
「へぇー。私はてっきり百合香の彼氏か、婚約者候補とかかと思ったけど」

 の返答に楓はキョトンとした顔になる。

「婚約者候補……ですか……?」
「あれ? 言われたことない?」
「いえ、確かに彼氏か、と聞かれたことはよくありますが、婚約者は初めていわれました」

 百合香はあの家柄と容姿から思いをよせている男子も多く、そのファンに近い人達に問い詰められたことがあるらしい。

「だろうね。男共が黙ってるわけないもんな。で、時田自身は百合香のコトは何も思ってないんだ?」
「ええ。魅力的な方だとは思いますが。それだけですね。さんはどうなんですか? よくお付き合いを申し込まれていると東条さんに聞きましたけど」

 今度は楓がに尋ねてきた。
 大体の時間、百合香と過ごしていれば百合香から、目立つの話を聞くのも不思議ではない。

「全部断ってるな。……あーゆー感情はいらないし……」

 の最後の言葉はあまりにも小さかった為に楓には聞こえなかった。
 楓には「全部断った」と言うことしか聞こえなかった。

 普段話さない人と、普段話すこともないような話題をしつつ、楓とはマンションに辿りついた。


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卯月 静