Act.12 安心






「大佐。書類をお持ちしました」

 ノックをして、結構な量の書類を持って、が入ってきた。
 昨日女性と一緒のところをバッチリ、に見られてしまった。
 別に彼女はロイの恋人と言うものではない。諸事情があって、昨日は一緒にいたのだが、きっとはロイの恋人だと思っただろう。
 昨日すぐに追いかけて誤解を解いておけばよかったな。
 と、ロイは書類に判を押しながら考える。
 は判が押し終わるのを待つため、ソファーに座ってもらっているのだが……。
 いつもと違い気まずい。
 昨日のことがあるため声もかけ辛い。

「押し終わったぞ、少佐」

 判を押し終わった書類を差し出す。

「ありがとうございま…………何するんですか?」

 ロイに礼をいい、書類を受け取ろうとしたのだが、書類をつかもうとしたとたん、ロイはその書類を引いた。もちろん、は書類を取りそこなった。

……昨日のことなんだが……」
「安心して下さい。別に大佐が非番の日に誰とデートしてようが、私には関係ありませんから。それより、書類を返してください」
「彼女は私の恋人ではないよ」

 ロイは真っ直ぐを見つめて、言葉を続ける。

「彼女は知り合いに頼まれてボディーガード代わりをしていただけだ」
「だから、私には関係ないと」
「君に信じてもらえないと私が困る」

 の言葉を遮る。
 ここで、に分かってもらえなければ今まで散々やってきたことが台無しになる。
 ようやくといい感じになってきいたばかりなのに。

「ですから、私には……」

 ロイはもう一度今度はゆっくりと、でも強く言った。

「君にだけは誤解して欲しくない」

 は視線に耐えれなくなり目を逸らす。

?」
「………………」

 は何もいわない。

?」

 尋ねても答えずそのまま出て行こうとする。

?!」
「……分かりましたから……」

 それだけ言って部屋をでていく。
 ロイは一人残されるが、その顔のは笑みがこぼれていた。




「何でホッとしてるんだろ……」

 あの女性がロイの恋人ではないと知ってどこかホッとしていた。
 ロイの恋人が誰であろうと自分には関係ないのに……。


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卯月 静