捜査 2




「何故だ」

 おとり捜査中のロイはおとり捜査のおとりの役をしているリザを見て呟く。
 リザは勤務中とは違い髪は下ろしていて。服装もいつもとは違う。
 始めリザ普段の通りの服で行こうとしたのだが、デート中という設定なのだからと服はロイが選んだ。

「なのに……何故……中尉の恋人(役)がアイツなんだぁ〜〜!!!」

 ハボックがおとり捜査の提案をして、ロイはリザの恋人(役)になろうと思っていた。
普段食事に誘っても滅多に受けてくれないが、これなら堂々とデートが出来ると思っていた。犯人が出てくれば捕まえることが出来るし、出てこなければ、そのあとあわよくば……と思っていた。
 なのに、だ。
 リザの恋人役をすることになったのはハボック。
 そう、ロイの目の前で、リザと仲よさそうに歩いているのはハボックだった。
 途中までは、ロイが恋人役をすることになっていたのだが……。

 事の起こりは数時間前。

「大佐……おかしくはありませんか?」

 リザはロイが見立てた服を着ている。
 普段リザが着ないような服。
 ロイはうきうきしていた。そして、捜査を開始しようとしたのだが、

「大佐がおとり捜査をして、犯人は出て来るんでしょうか?」

 と言うリザの一言で、皆はいっせいにロイを見た。
 そして、皆口々に言う。

「あ〜。確かに中尉の言う通りっすね」
「大佐が遊んでるのはイーストシティーの住民全員知ってますからね」
「別の者がやったほうが無難ですな」
「で、誰がやるんですか?」

 その瞬間皆の視線はハボックに集まる。

「へ? 俺?!」

 その瞬間、ハボックがリザの恋人役を務めるが決定した。
 最後までロイが意義を唱えていたが、結局ハボックがやることになった。



 そして、今に至るリザとハボック以外のメンバーは物陰に隠れたり、変装したりして、二人の後をつける。

「どう思います?出てきますかね、犯人」
「さあ、どうかしら。私たちは本物の恋人同士ではないから、出てこないかもしれないわね」
「やっぱ、そうッスよね〜。むしろ、大佐が犯人になりそうな気がするんっすけど」

 ハボックは背中に痛いほどロイの視線が当たるのを感じていた。もしかしたら、この捜査が終わったら、殺されるかもしれない。
 そんなことを話しながら、ハボックとリザは店に入ったり、食事をしたりしている。
 もちろん、後を付けているロイ達にリザたちの会話は聞こえない。
 只普通にデートしているように見えるのだ。
 ロイは今にも二人の間に入って行きそうな勢いだが。かろうじて、飛び出しては行かないように我慢している。

「本当なら私が中尉の恋人役だったのに……」

 まだいじけている。

「全然出てくる気配が無いっスね。やはりおとり捜査って無理だったんじゃないっすか?」
「あら、提案したのは少尉でしょう?」
「そりゃそうっすけど……、まさか、大佐がやるなんて思わないじゃないっスか」

 確かに提案したのはハボックだが、あれは半分冗談でまさか採用されるとは思わなかった。
 てっきり、バカを言うなといわれるものだと思っていた。
 だが、ロイはリザの恋人役がやりたいが為に、その案を採用した。
 東方司令部には女性が少ない。もともと軍自体に女性は少ないのだが、その中でも文官が多いため、このような捜査が出来る女性はリザくらいしかいない。
 だからこそロイは、リザの恋人(役)を出来ると思っていた。
 なのに、だ。蓋を開けてみると恋人役はハボックに取られてしまった。

「なかなか出てきませんな」
「もう、無理だな。今日はここで終了だ」

 とロイは、二人に中止と言うことを知らせに行った。


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卯月 静