捜査 4




 公園を抜け、リザの家の近くまで来た。

「ここで、いいですわ。ありがとうございました、マスタングさん」

 本来ならリザの家まで送るべきだが、ここで、目の前にいる彼女がハボックの彼女ではなく、リザだとバレてはいけない。
 そう思い、ロイは家まで送るのは諦める。

「そうですか、今日は貴方とお会いできて幸運でしたよ」
「ええ、私もマスタングさんとお話する機会が出来て、嬉しかったわ
」 「また、機会があればお食事でも一緒に行きましょう」

 女性を口説くときのまま、リザに話しかける。
 何も知らない一般の人が見れば、またマスタング大佐が女性に声を掛けているとしか思えないだろうが、事情を知っている後ろで見ていた部下達は呆れていた。

「つーか、いくら中尉と恋人のふり出来なかったからって、一応俺の彼女って設定なのに口説くかぁ?」
「あの、大佐ならやるだろう」
「実際ハボック少尉も何度か大佐に彼女を取られていましたしな」
「そういえばそうですね」

 上からハボック、ブレダ、ファルマン、フュリーの順。
 ファルマンが言ったとおり、過去何回かハボックは狙っていた女性を大佐に盗られている。
 別にハボックの彼女を大佐がとったというわけではない。
 ハボックがやっとのことで、デートに取り付けて、いざ告白というところで、「ごめんなさい」となってしまい。二言目には「マスタングさんが好きなの」といわれたり。
 ちょっといいなと思っている子からラブレターを渡されたと思ったら、大佐宛だったりとするだけだ。
 だが、結構ショックだったりする。
 リザと別れ、ロイはハボックたちのところに戻ってくる。

「結局出てこなかったッスね」
「ああ。……ハボック、念のため中尉が家に戻るまで、見届けておけ。他のものは私と司令部に戻れ」
「Yes,Sir」

 結局犯人は今回出てこなかった。
 ハボックとリザでは恋人同士には見えなかったようだ。


 昨日はリザが家に入るまで、付いて行ったハボックだったが、犯人は出てこなかった。

「今回は失敗ですね」
「早く捕まえないと、頭が痛くなる」

 ロイの前には大量の手紙。しかし、可愛いお嬢さん達からではなく、上層部からの手紙だ。
 ロイは一応一通り目を通して、全て燃やす。

「どうしますか?」

 失敗したからには、新たな方法でおびき出すべきか……。
 だが、恋人限定というのはやっかいだ。

「よし、悪いが中尉もう一度おとりになってくれ」
「別にかまいませんが……」
「今度は私が君の恋人役をやる」
「「「「「…………………」」」」」

 ロイの発言にリザ以下ロイの部下達は呆れる。

「大佐……昨日大佐が割り込んだとき全く出てこなかったじゃないっスか」
「何を言う。あれは恋人同士という設定ではなかったから出てこなかったんだ!」
「却下です」

 リザはキッパリと言い切る。
 全くこの上官は何を考えているのか……。
 どちらにしろ、捜査は全く進まず。早くしないと被害は増えるばかりになるだろう。


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卯月 静