捜査 5




 作戦が失敗に終わり数日が過ぎたが、あれ以来事件は起こっていなかった。
 あの事件が起こっていないおかげでロイ宛てにくる手紙の量も通常のものへと戻っていった。
 もしかしたら、様子を見ているのかも知れないため、気は抜けない。

「大佐、次はこちらをお願いします」

 事件が起こらなくなったことで、また書類ばかりの仕事に逆戻りだ。
 しかし、いくら解決してない事件があるからと言っても、ロイがそちらばかりに係っきりになるわけにはいけない。
 しなければいけないことは文字通り山ほどあるのだ。
 リザに差し出された書類を見て、ロイは大きな溜息をつく。

「中尉……そろそろ休憩だろう?」
「ですが、いままのままですと、締め切りまでに書類は間に合いませんよ」

 締め切りに余裕があるのなら、いや、締め切りが明日なのであれば目の前の紙の山は放り出しているところだ。しかし、あいにくこれらの書類の締め切りは、今日なのだ。
 これはなんとしてでも終らせなければならない。
 ロイは二回目の溜息をついた。
 目を通して判を捺したり、サインをしたりする作業。
 ひたすらこの繰り返しなのだから、飽きてくるのも当たり前。
 それでも、やっておかないと後々面倒だし、目の前にいる、金髪美人な副官に怒られるに決っている。
 美人は怒らせると怖いのだ。

「よし! 中尉今夜食事に行くぞ!」
「はいっ?」

 リザはロイが行き成りいったことの意味がわからないといった様子だ。

「ご褒美があった方が私のやる気がでるからな。それに君も最近働き詰めでゆっくりしていないだろう?」

 ロイは笑顔で言う。
 リザは少し悩んでいるようだ。
 確かに最近忙しく、ゆっくりとした時間が取れていない。
 だがそれは他の者も同じで、自分だけがゆっくりするわけにはいかない。

「ですが……」
「大丈夫だ。他のものには既に少しの休みは与えた。君だけがゆっくりするわけではないから安心したまえ」

 ロイの言葉に驚く。まるで心の中を読まれているようだ。

「……分かりました。ですが、きちんと終らせて下さいよ」
「ああ、まかせておけ!」

 自信満々で言い切った通りロイは仕事を時間通り終らせた。


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卯月 静