捜査 6




 実力はあるのになかなかやろうとしない人物ほど、厄介なものはない。
 リザは隣を歩くロイを横目でみながら思う。
 毎回毎回、リザに注意され、それでも全く彼の仕事ぶりが改善されることはない。
 注意したその日、よくて次の日は真面目に仕事をしているが、日が経つとまたサボろうとする。
 ロイだけがサボるのならまだしも、部下のハボック達を巻き込んでサボろうとするからタチが悪い。

「本当に少尉達が可哀相だわ……」
「何がだ?」

 リザの言葉にロイが反応する。
 どうやら口に出ていたようだ。

「いつも今日みたいに仕事を終らせて頂ければ、ハボック少尉達ももっと助かるのに、と思っただけです」
「毎日君が私と食事に言ってくれるというのなら、考えてみてもいいが」

 言うと思った……。
 ロイに食事に誘われるのはコレが初めてではない。もちろん、ロイと二人っきりということはあまりないが、それでもハボック少尉達とは食事に行くことは多々ある。
 リザと二人っきりになるときばかりロイは仕事を時間通り終らせる。
 それがわかっているからこそ、まれにリザから食事に誘うことがある。仕事を早く終らせて貰うためだ。
 そんな時は大概二人きりなので、そのたび似たような会話になる。

「そんなに頻繁に大佐と食事にいけるわけないじゃないですか。それに大佐には食事にいてくれる女性の一人や二人くらいいるでしょう」
「はは。確かに否定はしないがな」

 笑いながらロイはリザの言葉をかわす。

「否定はしない」

 その言葉に少なからず不快に思いながらも、ロイとレストランに入る。




 食事はなかなか美味しかった。
 今日行った店もきっと誰かと来たことがある店なのだろう。ロイはとても慣れているようだった。

「今日はありがとうございました」
「ああ、途中まで送っていこう」

 ここからはロイとは逆の方向になるからと、一人で帰ろうとしていたら、ロイはリザに並んで歩きだした。

「ありがとうございます」

 ここは素直に甘えておく。
 仕事中などで、変に女性扱いをされるのをリザは嫌うが、今はプライベートだ。
 ロイもその辺をわかっている。
 仕事中であれば男女の差なくロイは「自分の部下」として扱う。しかし、今日のようにプライベートに入ると別だ。
 その対応の仕方が女性に持てる要因のひとつにも思える。

「そういえば、ここら辺だったな」
「そうですね」

 唐突なロイの言葉。しかし、リザは何が言いたいのかわかっていた。
 今二人があるいているのは、通り魔がよくでるといわれている通りのうちの一つだ。

「この間出てこなかったから大丈夫だとは思うが……」

 それでも、警戒の必要はある。
 犯人がどういう基準でカップルを選んでいるのかが分からない。
 もしかすれば、この間のは捜査だとばれていたのかもしれない。

「ですが、軍人が二人いれば、犯人が来たところで逆に捕まえることも出来ると思いますが」
「ああ、確かにな」
 リザがそういうと、ロイは少し笑いながら答えた。
 二人の背後には黒く動く影があった…… 。


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卯月 静