瀬戸内を治めているのは、元親だけではない。
中国の毛利がいるのだ。
中国の毛利元就とは度々衝突している。
中国を治める毛利元就は、冷酷な智将として有名で、自分の兵は捨て駒だと言い切り、策の為であれば部下をも捨てる。
そして、その毛利が四国に攻めて来るという情報が入った。
「攻めてくる前にこっちから仕掛けるぞ」
四国の居城で、元親は集まる部下を見回しながら、言った。
いままで、毛利の策に嵌りそうになり、危ない事が多々あった。だが、今回は情報が早く入ってきた。
ならば、これを使わない手はない。あの毛利元就にしては、情報の管理が甘いとも思うが、いい加減決着を着けるべきなのだ。
それならばと、先手を打ってこちらから、仕掛けることにした。
待ってるのは元親の性に合わない。
「野郎共、海に出るぜ! 準備しろっ!」
「お前は城に残っててもよかったんだぞ?」
「いいえ、私も元親様のお力になりたいんです。海での戦であれば、私の力は必要ではないですか」
の瞳は真っ直ぐで、反対してもきっと聞かないだろうと思った。
溜息を吐きつつ、元親は頭を掻きながらも仕方ないとを止めるのを諦めた。
傍にいた方が、自分が彼女を守れるし、なにより、彼女には伝説の忍がついている。
伝説の忍、風魔小太郎がどれほど信用できるのかは分からないが、その実力は確かだ。
「アニキ。前方に待機している毛利の水軍が見えますぜ」
「そうか。よし、準備はいいか、野郎共っ!」
「オーーーーーッ!!」
「毛利に一泡吹かせてやろうぜ」
小さめの船を数隻出し、攻め込む。
船本体には、数名の部下とを残していく。大きな船で行ったのではばれてしまうから、小さな船で奇襲をかけることにした。
毛利との因縁に決着を付ける時が来たのだ。
「て、敵襲ーーっ!!」
船を側に付け、次々と長宗我部軍が乗り込むと、毛利軍は慌しく動きだす。
まさか攻め込まれるとは思っていなかったのか、何の準備もできておらず、勢いに乗っている長宗我部軍の敵ではなかった。
「甘いぜっ!」
元親もバサバサと敵を倒していく。彼の周りには、倒れた敵兵しかいない。
正しく鬼のような彼の戦いっぷりに、まだ倒されていない毛利の兵は元親と対峙するも及び腰だ。
「ったく。毛利の野郎はどこにいやがるんだ?」
敵を倒しながら大将である毛利元就を探す。
いくら奇襲だとしても、あまりに手ごたえのなさ過ぎる戦。僅かながら不気味さを感じつつも、毛利を打つべく彼の姿を探す。
だが、先ほどからいくら倒しても毛利軍が撤退する気配はなく、かといって、反撃してくる気配もない。
ただ、長々と戦が続く。
早く決着をつけなければ、こちらの兵も多くを失ってしまう。
だが、毛利元就の姿はない。
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卯月 静 (08/02/23)