【戦国御伽草紙:雪国のかぐや姫 弐拾壱】閑話 思惑
お世話になった宿の人々に挨拶をして、城に戻った。
そこで初めて分かったことだが、宿の主人がを見つけたのは偶然でもなんでもなかったらしい。 城からが居なくなった直後に、政宗は手を回していたらしい。 宿の性質上、いろいろな情報が集まる。そのため、あの宿は伊達の情報源の一つだった。 つまりは、宿の主人は政宗と繋がりがあり、その上、のことも知っていたのだ。 むろん、このことを知っていたのは、主人とその奥さんである女将だけだ。 「不満そうだな」 「だって……政宗さんの手の平で踊らされてたみたいじゃない。迷惑かけないようにって出たのに……」 と不満を漏らしながら、持ってきた湯のみに口をつける。 通りで上手く行き過ぎてたはずだ。 運よく働き口ができたと思ってたのだが、最初から決まっていたらしい。 「最初から戻るのは決定してた訳ね」 「いや」 「え?」 政宗の否定の返事に、思わず声を上げる。 「最初は連れ返らずに、あのまま、宿で生活した方がいいじゃねえかと思ってた」 城というか、政宗のそばに居れば、他国から狙われることもあるかもしれない。 いくら、自身が流したとはいえ、あの『不思議な力を持った姫君』は他国にならわれるハズだ。 を危ない目には二度と遭わせたくない。 そう考えて、あのまま宿で生活するのがいいと思った。 「じゃあ、なんで、私を連れ帰ろうって思ったの?」 「あー。小十郎に、傍にいなくて、気になるなら、さっさと連れ帰って来いっていわれてな」 仕事が滞ってしょうがないってな。と政宗は視線を逸らして付け加えた。 その様子が、とても可愛くって、はくすくす笑った。 が笑っていることに気付いた政宗は、 「Don't laugh!」(笑うな!) と、言ったが、そんな政宗もなんだから可愛く思えて、しばらく、は笑っていた。 次へ 戻る 卯月 静 (07/02/20) |