【戦国御伽草紙】雪国のかぐや姫 伍拾壱
医者の話によると、頭を打ち、少し血を流しすぎた為の貧血だそうだ。 打ったところが頭だということで、少し心配ではあるが、命に別状はない。 直に目を覚ますだろうとのことだ。 「私のせいだよね……」 「それを政宗様に言ってみろ。怒られるぞ」 寝ている政宗の傍で、自分を責めるに小十郎は静かに声をかける。 「だって……私がいなければ、あんなの政宗なら楽勝でしょ?」 確かに、あの人数であれば政宗なら一瞬で片付けられただろう。だが、を離さなかったのは政宗自身だし、受け身を取れなかったのも政宗自身。 そして、何より、自分がいるからと供をつけなかったのは彼自身だ。 の言葉を聞いたら、きっと彼は怒るだろう。バカなことを言うなと。 怪我人ではあるが、目を覚ましたら説教をしなければいけないと小十郎は溜息を吐いた。 「目が覚めたら、暫くは政宗様には安静にしてもらわないといけねぇんだ。その間の看病は任せたから頼むぞ。自分のせいだと思うなら、献身的に政宗様のお世話をして差し上げろ」 「うん」 「、ちょっといい?」 襖を開けて入ってきたのは猫。 「襲ってきた忍のことなんだけど……」 あの時、はとっさに猫に忍を追わせた。ただのごろつきであればそのまま放っておいたが、忍となれば、どこかの国が狙ったのかもしれないと思ったのだ。 「何か分かった?」 の問いに、猫は首を横に振る。 「わかったのはあの忍達がどこにも所属していないことだけ」 「どこにも所属してない?」 「詳しく話せ」 猫の報告に小十郎が促す。 「追いついた時には既に全員事切れてた。持ってるものとかから割り出してみようとしたけど、どいつもこいつも何処かから抜けた忍ばかりだったわ」 「…………」 猫の報告に小十郎は渋い顔をする。 「元の所属もバラバラだったみたいだから、誰かに雇われてたことは間違いないわ。でも、それが誰か分かる物は何もなかったの」 「、この事については俺に任せて貰っていいか?」 「あ、はい。私じゃどうすることもできないんで」 「悪いな。猫、悪いがそのことを勘解由に伝えてくれ」 「はい」 猫が出て行き、再び部屋は静かになる。 「……っつ…………」 「政宗!?」 「政宗様!?」 呻くような声に二人は政宗を覗き込む。 政宗はゆっくりと目を開け、体を起す。 「政宗様。お体の調子は?」 「……小十郎か……ちぃっと、頭が痛ぇが、問題はねえ」 まだ疼くのだろう頭を軽く押さえ答える。 「政宗……」 はそっと呼びかけてみる。が、返って来たのは思っても見なかった言葉だった。 「……アンタ、誰だ?」 次へ 戻る 卯月 静 (07/12/11) |