ザ・テンペスト
【 Valentine's Day -for Toushirou-】



 は、チョコを持って副長室へ行く。
 土方は甘いものをあまり好まない。バレンタインといえども、チョコよりも、マヨネーズを渡した方が喜ばれるかもしれない。
 もっとも、があげなくても、土方は多くの女性に貰っているだろう。だが、他の隊士にはあげるのに、土方にあげないのもと思い。甘いのが苦手だから、他とは別に作ったのだ。

「土方さん、失礼します」

 副長室では、紫煙を漂わせながら、書類に向かう土方がいた。

「あ? どうした」

「これ、どうぞ」

 は土方にチョコを差し出す。

「一応甘さ控えめにしてるから、土方さんの口にも合うと思いますよ」
「おう、ありがとうな」

 土方は照れつつも、のチョコを受け取る。
 しかし、そのまま書類に再び向かおうとした土方に、声をかける。

「今、食べてくれないんですかー」

 にねだられて、土方は包装を解き、箱を開ける。
 はドキドキしつつそれを見ている。

「…………甘ぇ…………」
「えー? 甘さ控えめにしたんだけどなー」

 一口食べると、そう呟いた土方に首を傾げる
 しかし、失敗したかとが落ち込み始めたのを見て、土方は慌ててフォローする。

「い、いや、甘いのは甘いけど、すっげー甘いわけでもなくて、それに不味いっつーわけでもないぞ」

 おろおろと、困った顔で、言う土方を見て、は笑う。

「土方さん、そんなに必死にならなくても」
「いや、でもな……」
「美味しかったのは、美味しかったんですよね?」
「あ、ああ」
「なら、よかったです」

 美味しかったという結果が聞けて、は笑顔になる。
 そんなをみて、土方は急に、背を向け、仕事を再びし始めた。

「じゃあ、俺はまた仕事始めるから」

 邪魔してはいけないと、は副長室を出て行った。
 襖が閉まる音を聞いて、土方は机に突っ伏した。

「あそこで、あの笑顔は反則だろ…………」

 自分の顔が赤くなっていることに、が気づかなかったことにホッとしつつ。今度こそ再び書類に向かった。


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卯月 静 (09/02/14)