ザ・テンペスト
【 Valentine's Day -for Gintoki- 】



 屯所を出て、万事屋へ向かう。
 もちろん、別に作ったチョコも持参だ。多分、他のメンバーもいるだろうから、多めに作った。

「こんにちは〜」
「あ、さん」

 万事屋に行くと、新八に迎えられた。快く上げてくれたので、もあがる。

!! 今日はどうしたアル?」

 神楽はの持っていた紙袋を目ざとく見つけ、駆け寄って来た。

「それ、ひょっとしてチョコアルか!」
「うん、バレンタインだから、皆にと思って」

 差し出すと神楽はすばやくそれを取る。

「お前っ!! それは男が貰うもんだろ!!」

 銀時は、神楽から素早く奪う。しかし、神楽は負けじとそれを奪い返そうとする。

「まだ、あるから大丈夫ですよ」

 万事屋に持っていくとに言うと、多めに持っていけと言われたので、助言通り多く持ってきたのだ。

「うめーな、おい。しかも、すげー甘くて俺好みだ」
「銀さん、食べすぎると体に悪いですよ」
「うるせーよ。俺のために作ってくれたんだ、食わなきゃ悪ぃだろーが」

 別に銀時さんのためではないんですけど、というの声は届くことはなく、まるで、これは俺が貰ったんだと主張している。
 銀時が甘い物が好きだと聞いていたから、通常よりも甘く作ってはみた。しかし、これほど喜ばれると作った甲斐がある。

「なあ、コレって多串くん達にも作ったのか?」
「多串? ……ああ、真選組の隊士の皆には義理チョコで同じ物作りましたよ。これとは別に」

 銀時さんには甘いのがいいと思って、別に作ったのだと言うの言葉を聞き、銀時は勝ち誇ったような表情をしている。この調子だと、明日は真選組の皆に自慢する気かもしれない。

「サンキューな、美味かったぜ」
「そうですか、それは良かったです。来月は期待してますから」
「え。マジ?」
「はい。お返しは常識でしょう」

 にっこりと返すに、銀時は冷汗をかく。金は無いと言って返さなくてもいいだろうが、きっと真選組の連中はきちんと返すだろう。そうすると、折角特別仕様のチョコを貰っても自慢した意味がない。

「あー……飴玉くれーはやるよ」

 来月は仕事を多めにしないといけないかなと思いつつ、こう答えるだけが精一杯だった。


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卯月 静 (09/02/14)